AI時代の大逆転 / 第04話
PART 01 · 未来と「強さ」

大貧民の革命。手札は同じでも、強さが変わる

第04話の扉絵
ほかの回を読む全18話の目次を開く

配られた手札を見て、「今日は勝てそうだ」と思ったことはあるだろうか。トランプの大貧民、あるいは大富豪では、強い札が多いと気分がよい。逆に、弱い札ばかりだと、どうやってこれを出し切ろうかと考える。ところが、その見立てが途中でひっくり返ることがある。

遊んだことがない人のために、基本から説明しよう。これは、順番に札を出し、手札を早くなくすことを目指すゲームだ。前の人より強い札を出せるかどうかが、進め方に関わる。細かなルールは地域で違うが、よく遊ばれるルールでは、数字の3が弱く、2が強い。

そのため、2はここぞという場面で使える頼もしい札になる。3は、ほかの人に邪魔されずに出せる機会を探したくなる札だ。どちらも一枚の紙だが、ゲームの中での意味は違う。プレイヤーは、その強弱を前提に、何を先に出し、何を残すかを考えている。

そこへ「革命」が起きる。同じ数字の札を四枚以上まとめて出すなど、採用するルールの条件を満たすと、数字の強弱が逆転する。先ほどまで強かった2が弱くなり、弱かった3が強くなる。ジョーカーは別扱いだが、数字の札の見え方は一気に変わる。

おもしろいのは、手元の札そのものは変わっていないことだ。新しい札をもらったわけでも、3が別の数字に書き換わったわけでもない。それでも、残念に思っていた手札が頼もしくなる。札の価値は、札の内側に固定されていたのではなく、ルールとの関係で決まっていたのである。

ただし、革命が起きれば、それまで不利だった人が自動的に勝つわけではない。手札を出す順番や組み合わせ、ほかの人の動きがある。ルールによっては、もう一度革命が起きて元に戻ることもある。強い札を持つことと、その札で勝ち切ることの間には、まだ判断が必要なのだ。

この話を、私たちの仕事に置いてみよう。資格、専門知識、語学力、経験、会社の名前。どれも、これまで手に入れてきた大切な札である。その力は自分の中に残っていても、同じことをできる人や道具が増えれば、社会がその札に払う値段は変わる可能性がある。

たとえば、ある言語で情報を読める人が限られている場所では、それ自体が強みになる。翻訳の助けを広く使えるようになれば、入口の差は縮まるかもしれない。その先で、現地の事情を理解し、相手と関係を築き、仕事を進める力との組み合わせが、より問われるようになる。

ここで、語学を学ぶ意味が消えた、と飛躍したくはない。自分で理解できるから見抜ける違いも、直接やり取りできるから生まれる関係もある。変わるのは、その能力だけで担っていた役割や希少性である。能力を持っているかどうかに加え、何と組み合わせるかを考えたい。

また、強い札を持つ人が、変化にも対応してさらに強くなる場合はある。資金や顧客とのつながりを持つ組織が、新しい道具を先に使いこなすことも考えられる。AIを一枚の「革命カード」とみなして、弱い側にいればいつか必ず勝てると待つのは、心もとない戦い方だ。

私がこのたとえから受け取りたいのは、今の順位を永遠のものにしない姿勢である。高く評価されている自分も、思うように評価されていない自分も、今の物差しだけでは決まらない。自分の持つ力を知り、どこで、誰のために使うと意味を持つのかを、繰り返し見直すのである。

その見直しは、何もかも捨てて新しい自分になることとは違う。経験と新しい道具を組み合わせる。得意な人と一緒にやってみる。慣れた役割の外へ、小さく足を出す。手札の増やし方だけでなく、つなぎ方や出し方を変えることで、見えてくる可能性がある。

ゲームの革命は、はっきりした合図とともに起きる。社会の変化には、その合図がない。気づいたら、ある仕事の進め方や評価が変わっている。いま、机の上の仕事と、身体を使う現場の仕事の間で、何が起きうるのか。次はその境界から、私たちの手札を見直してみよう。

参考資料

日本大富豪連盟「革命」「公式ルールブック」

https://daifugojapan.com/rule1

https://daifugojapan.com/rule-book