4%ルールは日本でも使えるのか?便利な目安を「答え」にしない
年間生活費の25倍を用意し、毎年その4%を取り崩せば資産を長く維持できる。いわゆる4%ルールは、経済的自立を考える人にとって非常に分かりやすい考え方です。
しかし、分かりやすい数字ほど危険でもあります。前提を外したまま「4%なら大丈夫」と信じれば、人生の重要な決断を一本の数字に預けることになります。
4%ルールが教えてくれること
4%ルールの最大の価値は、経済的自立を計算可能にしたことです。年間生活費300万円なら7500万円、400万円なら1億円というように、生活費と必要資産を結びつけられます。
この関係から、生活費を下げる効果も見えます。年間生活費を60万円下げれば、単純計算では必要資産が1500万円下がります。収入だけでなく、生活費がゴールを決めるという重要な事実を教えてくれます。
ただし、これは出発点です。個人の未来を保証する答えではありません。
日本で考えるときに追加したい論点
日本で暮らす人には、税金、社会保険、年金、為替、国内の物価、住居、医療・介護など固有の条件があります。海外資産へ投資する場合、円で生活しながら外貨建て資産を持つことになります。円高・円安は、資産評価と生活費の関係を変えます。
また、想定する運用商品の構成によっても結果は違います。株式だけなのか、債券や現金を含むのか。配当中心なのか、必要な分だけ売却するのか。税引前の数字なのか、税引後なのか。この違いを無視して「4%」だけを取り出すことはできません。
制度や税率は変わります。だから特定の数字を一度決めて終わるのではなく、毎年、生活費と資産配分を点検する必要があります。
平均利回りより怖い「順番」
長期の平均利回りが同じでも、退職直後に暴落が来る場合と、資産が十分に増えた後に暴落が来る場合では結果が違います。最初の数年に資産を大きく減らし、その状態で生活費を取り崩すと、その後相場が回復しても元に戻りにくくなります。
平均値だけを見れば安全に見える計画も、リターンの順番によって破綻する可能性があります。会社を辞めた翌月に相場が30%下落しても、同じ生活を続けられるでしょうか。この問いに答えられなければ、まだ退職の準備は完成していません。
現金を一定割合持つ、取り崩し額を調整する、小さな収入を残す、相場が悪いときは支出を下げる。複数の防御策を組み合わせることが重要です。
4%ではなく、幅で考える
私は、経済的自立を一つの利回りで計算しないことを勧めています。悲観、標準、楽観の複数シナリオを置きます。利回りが低い期間、インフレが高い期間、大きな支出が重なる期間も考えます。
さらに、完全に資産収入だけで暮らす案と、好きな仕事から一定収入を得る案を比べます。年間60万円の収入が続くだけでも、資産の取り崩しは大きく変わります。
4%ルールを捨てる必要はありません。地図上に最初の目印を置くためには有用です。ただし、目印と目的地を混同しないことです。
経済的自立とは、計算上ぎりぎり会社を辞められる状態ではありません。悪いことが起きても、人生の選択権を失わない状態です。4%という美しい数字より、想定外に耐えられる設計の方が、自由を守ります。

